カンボジア農業の人脈と情報源

情報はお金です。

収穫できても相場が安すぎて儲からない、相場が下がったので収穫を遅らせて結局廃棄になる、高級志向で経費をかけたがうまく育たない。

大面積を整備したが栽培技術がなくて穫れない。
原料でも売れるものでも一次加工(乾燥など)しないと貯蔵性が悪くて失敗するケースもあります。
相場、栽培技術、カンボジアで加工ができるか、どれも先に情報があればリスクはずいぶん減らせたはずです。

では新興国において様々な情報を収集するときの、情報源はどのようなものがあるのでしょうか。

ここでは、これまでカンボジアで農業関係の情報にあたってきた経験から、その実例についてご紹介したいと思います。

情報収集の取っ掛かりとして参考にしていただければと思います。


人脈を築こう

情報にアクセスするにあたり、まず重要なのは人脈です。

どのような情報源があるか自体が重要な情報であり、そのとっかかりは「人に聞くこと」です。
また外国では言葉の壁も考慮に入れる必要があります。

ここでは新興国においてどう人脈を築いていくのか、実例を挙げつつお伝えしたいと思います。

最初の一歩

農業はまず最初に農地探しが必要です。
そこで直面するのは、言葉と習慣の違いです。

畑を探す以前に、通訳を探さなければなりません。
日本人の常識と違うことは多々あるでしょうから、農村の現実を知る通訳または情報提供者が必要です。

しかし日本語をよく理解し、習慣の違いも考慮に入れていろいろテキパキとこなしてくれる通訳がそんな簡単に見つかるはずがありません。
言葉が話せても若い人だと国や社会の状況を理解しているとは思えませんので、農地に限らず有益な情報を持っている可能性は低くなります。

そこで最初の1歩としては、やはりプノンペンの有力者や古参の日本人に相談するというのが通例になると思います。

人の集まるところ、様々な会などに顔を出してみましょう。
そこからさらにネットワークを広げて、必要な情報にアプローチしていけます。

誰からどのような情報を収集するか

徐々に人的ネットワークが広がる中で、どのような人が何に詳しいか徐々に分かってきます。

いくつか例を挙げますので参考にしてください。

相場価格

たとえばカンボジアの名産品である胡椒は多くの外国人が関心を持ちますが、価格が下がり、新規に始められる方は減っていると思います。

胡椒は世界中で消費されるものであり、店頭価格が下がったということではなさそうです。
一方、ASEAN域内での作付け面積が増えていることは数年前から分かっていたことです。

また10年ほど前には病害虫で生産量が激減し、一時的に高騰したという話も聞いています。

作物相場は様々な要因により変わります。
そうした情報は私よりも投資家や輸出入関係者の方がお詳しいと思います。

ビジネスパートナーからの情報

日本の例では、ジャガイモやトウモロコシなどの加工野菜の大手工場は品種の選択から栽培技術、肥料設計まであらゆる情報を農家に提供しています。
確実にニーズのある作目を作ることができる、有益な情報です。
ただ加工品を求める業者さんは加工業者だけでなく仲介業の方もいます。
後者の場合、加工品を取引する上で必要な情報もわからない場合があります。

加工用原料は品質と納品時期、最小ロットなど制約があり、簡単に生産できますと言えるものではなく、サンプルでさえある程度の交渉をしない作ることは不可能です。

よってこれは「自分のいま置かれた状況では、加工用原料を生産するビジネスは難しそう」という情報かもしれません。

ビジネスパートナーからどのような情報が得られるか、それをどうビジネスに活かすか考えてみてください。

個人で頑張っている人に出資する

カンボジアには、個人でいろいろ研究しながら農業に取り組んでいる日本人もいます。
そんな方に資金のバックアップをして情報を得るというのも一つの方法だと思います。

あるいは頑張っているカンボジア人若者の農場も点在しています。
そちらは投資しても見返りを得るところまでは難しいですが、農業進出の情報代と割り切って支援してもいいかもしれません。
特に現地で実際にワークする栽培方法、人の管理などは、やはり実際に取り組んでいる人の生の情報が非常に参考になります。

現場の情報

情報を自分で直接獲得していくことも重要です。
農地の情報を得て通訳が見つかったら、生産現場(農村)に足を運びましょう。

カンボジア農業の現地情報を得るよい機会ですので、多めに時間をとるのが良いと思います。
通訳がいれば目当ての農地だけでなく、寄り道していろいろな人にお話を聞くことができます。

通りすがりの畑で、知り合いなのかと思いいろいろ聞いて、あのおじさんの名前はと聞くと「知らない」と返ってくることも今はもう驚かなくなりました。

また農業の周辺にかかわりたい人と、農業をやりたい人、農業をやっている人では見える景色が違います。
たとえば農作業用の牛を育てて売る農家と農業機械を販売する人では、同じ状況でも言うことが変わってきます。

農業をこれからやりたい人として、広く状況を見てください。
様々な現地の人に、積極的に話しかけてみることです。

人脈構築は時間がかかる

特に現地人との人脈につきよく言われるのは、「最初に誰と付き合うか」です。
有能で日本語が話せて人脈もある現地人にはそう簡単に出会えません。

皆さん苦労して、時間をかけて人材を探したり育てたりしているようです。
結局、人脈作りも簡単ではないつもりで日頃からアンテナを立てて動き続けるしかありません。

ご自身で、あるいは社員を数か月滞在させるだけで相当量の現地情報を手に入れられますので、それをやらないのはもったいない話です。

もちろんその滞在期間にどれだけ有益な情報を手に入れられるかはどんな人に会えるかで決まります。
積極的に人に会い、紹介してもらい、話を聞くことに十分な時間を取り、信頼できる人とつながりを作ってください。

その他の情報源

人脈以外にも、様々な情報源から情報は得られます。

政府統計やネット上の情報サイトなどを駆使してデータを収集しましょう。

また自分で直接見聞きすることも重要です。

統計情報など

大面積が広がる中南部と西部は機械化が進んでいます。

統計情報では農家戸数が数年前の半数になったとも報道され、急速な変化があるようです。

しかし、ほとんどの籾が0.2ドル程度の販売額なので、カンボジアの農家は合理化を迫られています。
そうしたことは政府機関などが発信しています。
政府サイトのみならず、情報サイトや英字新聞などを駆使してデータを収集しましょう。

以下にいくつか情報ソースを示します。


組織ネットワーク

カンボジアにある各組織、


その他NGOなどが情報発信しています。

HPで有益な情報が発信されていないか、面白そうなイベントがないかなど、チェックしてみましょう。

展示会

カンボジアでは1州1品展示会というものがあり、2013年から毎年見に行っています。
ここでも様々な情報を得ることができます。

多様な展示品

以前は素材(原料)が多かったり、商品の種類が少なかったりしたのですが、近年は多様性に富んだ展示会になっています。

出店数は若干減ったような気もするのですが、加工食品は確実に増えています。

布製品はストールのように使ったり、厚手の物はスカートなどに使われます。
シルク素材の物は高級品として人気があります。
カンボジアシルクは伝統工芸品で、昔からあるものです。
では新たに出てきたものはどのようにして生産され、ここに来たのでしょうか。

毎年行って変わるもの、変わらないものを観察すると、カンボジア経済の胎動を感じることができます。

展示品から見えるカンボジア事情

雑な袋だったり、大きな袋が多かった農産物も手ごろな量になり、パッケージもオシャレになってきています。

薬効のある植物をタブレットにした商品や、真空パックの酢漬けなども登場し、加工技術と同時にパッケージ類もカンボジアで手に入る環境ができてきたことを伺わせます。

ただ、国内に生活用品や、段ボールやパッケージの工場が出来るのはまだ先なのではないかと思います。
そうしたものを輸入に頼るため価格はそのぶん高くなります。

隣国から陸路で入ってくるので特別高いということもないのでしょうが、工場があると使い方や規格等の情報も提供してくれるので期待したいところです。

あちこち寄ってみる

農業は幅広い仕事ですので、あらゆるところで関連の情報を取得できます。
ちょっと出かけたときにあちこち寄ってみるのは、情報収集上有効だと思います。

トラクターの部品を買いに行ったのに種屋にも寄り、ついでに肥料屋に寄る。
せっかくなので、ホームセンターで安物の工具を見ながら作業着を買ってくる。
試験栽培の畑に行ったついでに途中の畦道を抜けて胡椒畑をのぞく。
その帰りは近道をして売りに出ている畑を見て回ったり、ドライバーにこの辺の売値とか借地料の相場も聞いてもらう。
だんだん土質と価格と場所の相関関係が見えてくる。

カンボジアではまだ圧倒的に牛と耕運機が原動力だな、というのも目の当たりにする。
とは言え、作業面積ではトラクターの比率が上がってきているようです。

あるいは野菜を見たいというお客さんを市場に連れて行っては、通訳にあれもこれもとついでに価格調査。

こうしたことの積み重ねで、農業ビジネスのおかれた大きな状況も徐々に見えてきます。
また見聞きした情報はエクセルなどでデータ化しておくと良いと思われます。

ミニマムにやってみよう

大量の情報を収集・整理するまで何もしてはいけないわけではありません。
むしろ最大の情報源はビジネスそのものです。

情報が無いままに大きな投資をするのは無謀ですが、ミニマムに畑をビジネスとしてやってみるのは、儲からなくとも将来の飛躍に向けたよい投資です。

「自分で」やる

まず大事なことは人にやらせるのでなく自分でやることです。

組織でやる場合は、特に初年度の試験を外注したり現地採用の素人に任せるのは言語道断です。

素人の担当者が来ても何もわからないので、経験者または農業に興味のある人でなければ対応は難しいでしょう。

現場とのコミュニケーション

また特に現場でカンボジア人と仕事をする時に一番大切なのは話し合うことです。
新興国に、言えばそのとおりにやる日本の文化はありません。

私も「いいからやれ」ではなく「やってみようよ」で納得してもらう事を心懸けています。
このやり取りの関係が出来ないと結果がでないことは明白です。
工場などは若い人材を雇って、マニュアルで作業方法を教育できますが、太陽と土と水に影響される農業は、ベランダの野菜作りとは比べ物になりません。

この地で経験を積んだ農家のノウハウをまず知り、その上に合理化や必要な設備投資をする必要があります。

最初の1年は体験に

現場に張り付いて畑の状況を確認するところから始めなければ農業を始めるのは難しいと思います。
お金も必要ですが、自分や社内の人材を育てる、情報を得るための時間をかけるところから農業は始まります。

除草や畝作りはほとんどが手作業なので、まずは機械化合理化を試行してみてはいかがでしょうか。
堆肥の製造、日除けや雨除け、散水設備の整備の検討も必要です。

まず、カンボジアの農業を体験して改善点を探すというのが最初の1年の目標だと思います。

そうして小さくとも実際にビジネスをする中で自分の情報ニーズも徐々に分かり、人脈もでき、どのような情報源にあたるかも見当がつくようになってくるはずです。

0 件のコメント :

コメントを投稿