新興国の農業情報収集について

事業を展開する上で、何の情報も得ずに進める無謀な方はいないと思います。
農業の最初の1歩である農地探しからして適切な情報が必要です。
しかし新興国には適切に整理された情報というものがあまり存在しません。
情報を収集するだけでなく、錯綜する情報を自分なりに見渡し、整理するスキルが必要になります。

そこで今回は、

  • 収集した各種情報をどのように見渡すべきか?
  • 有益な情報を得るために留意すべき点は何か?

といったことについて、カンボジアでの5年半の経験から、まとめてみたいと思います。


情報の見かた

農業を始める上で必要な情報は多岐にわたります。

情報はそれを持っている人の視野の広さやバックグラウンドによって切り取り方が変わってきます。
たとえば農家の父さんが話すことは事実であってもかなり地域限定的な話で、もっと広い範囲ではぜんぜん違うということがあり得ます。

またデータや事実の背後には、その理由となる様々な要因があります。
その事実はどのような背景のもとそうなっているのか?という情報まで取得しないと、意味のある判断はできません。

ここではまず、様々な情報をどのように見渡して正確に状況を把握するかについてまとめます。

局所情報と広域情報

昨年、米が不作だったという話を聞いたと思ったら、反対側から昨年は米が安かったという話が聞こえてくることがあります。
どうも私の通っていたカンポットでは豊作だったらしい。

あるいはクラチェのキャッサバ畑は雨が少なかったので比較的成長が良かったという話がありました。
しかし雨期とはいえ、ゲリラ豪雨のような降り方をする東南アジアでは単純に雨が多いとか少ないとかの話はできません。
新興国では様々な情報がリンクしていないので、ゲリラ豪雨と同じにゲリラ情報=極地情報が多いです。

話されたことは事実であるとしても、それがどの範囲で真実であるのかは自分で判断し、正確な情報に修正するしかありません。

特に農家から情報を得る場合、彼らは局所情報しか頭にない可能性を計算に入れておく必要があります。

「不作なのに米価格が安い」というのは他の地域で豊作だからかもしれず、そのまま鵜呑みにすると経営判断を誤る可能性があります。

3方向から情報を得る

上のこととも関連しますが、振興国は

  • お上の情報と現場の情報
  • 統計と実態

が違う事はそう珍しくありません。

現場の情報も統計情報もそのまま鵜呑みにはできないのです。

農地の情報を得て「じゃあ借ります」って現地に行ったら値段が3割アップ、なんてことも珍しくありません。

ですので、最低3方向からの情報を取らないと本当にどうなっているのはわかりません。

えらい人の言うこと、統計、現場の情報、それぞれを総合し自分で整理して正確を期していく、という連綿とした努力が必要です。

背後の要因を知る

現地の人の情報は正確ではないことも多いですが、それでもいろんな「ナゼ」がわかることが多々あります。

たとえば苗の値段はなぜ違うのか、工場に納品しても伝票をくれないのはなぜか、といったことです。
あるいは地価が正当がどうか、なぜ土地や物件を紹介したがるのか。
いろいろ聞いているとカンボジアならではの仕組みが見えたりします。
安く仕入れるコツはカンボジア人に好かれることなどという、どうやったらいいのかわからないようなこともあります。

つまり起こっていることにはさまざまな要因があります。

苗の値段、伝票、地価といったそれぞれの事実の背後に、それぞれがそうなる仕組みがある。
仕入れ値が高値になってしまうのには理由がある。

事実の背後にある要因がどういうものか把握できると、何にどのように働きかけるかも見えてきます。
逆に言えばこれを見極めなければ新興国での仕事は失敗です。

有効な経営判断のために

以上のことをまとめて言えば、

  • 幅広く情報を得て突き合わせ、事実を見極めた上で
  • どういう仕組みのもとそうなっているかを考える

ということです。

誤った認識のもと、仕組み上できないことをいくら経営判断しても、成功はおぼつきません。

腰を据えた情報収集を

情報の見かたについては理解していただけたでしょうか。
では状況を正確に見極める姿勢のもと、実際に情報収集を試みましょう。

農家の父さんに謙虚に耳を傾けつつ、ネットで統計情報を調べつつ、最新の政府発表ニュースをチェックしつつ、なおかつ鵜呑みにせず、事実が何であるのか、なぜそうなっているのか見極める。

そうした有効な情報収集ができるようになるにはどういうことが必要か、ここではまとめます。

労力がかかる

日本なら時間をかければ得られる情報でも、カンボジアで調査すれば時間プラス費用が掛かります。

農地を探していたときも、

  • 人脈以外で調べようがない
  • 情報が単なる噂か事実かわからない
  • 商社と農家では微妙に情報のとり方が違う

といったことがあり、有益な情報を得るのはそう簡単ではありませんでした。

新興国で正確な情報が迅速に発信されるようになるには、基礎教育、経済、政治にまで改革が必要です。
それが現実的なことではない以上、2倍のお金と2倍の時間をかけるつもりで取り組む覚悟も必要です。

情報収集のスピード

とはいえ情報収集のスピードも大事です。
発展のただ中にある新興国では1年経ったらすっかり景色が変わってしまうことはざらにあります。

情報が錯綜していてわかりにくいのでとりあえず様子を見たくなりますが、落ち着くのを待っていると今度は乗り遅れます。

腰を据えつつ個々の動きはスピーディにする中で、徐々に必要な情報を取得し整理できるようになってきます。

「現地にいる」ということ

上記を鑑みると、やはり現地にいてあちこちに足を運び、自分の目で見ることが大切です。
新興国でネットに整理された情報は数ないと思います。

農業はやはり歩くこと、農家の父さんに会うところから始まります。
カンボジアは日本の半分の国ですが、試験場や農場主には素晴らしい方がいます。
それである程度情報を得たら、次の段階として一番いいのは現地で試験的にミニマムでやってみることです。
その中で現場に張り付いて畑の状況を確認するところから始める。

当然お金もかかります。
上に書いた「労力がかかる」とはそういうことです。

情報もビジネスも雪だるま式に

これまで述べた情報収集に関して、根本的に大切なことは「汎用的な知識をカンボジアに合った形に創り上げること」です。

どこででも通じる知識を持ち込むようなアプローチは通用しません。

だからこそスピーディかつ慎重な情報収集を、現地で連綿と時間をかけて続けていく必要があるのです。

長期回収のビジネス

とは言え、5年半のカンボジア生活で農業経験者には数人しか会っていませんし、その方々もすでにほとんどがカンボジアにはいません。

短期的な利益追求型だと、状況が見えてくる前に撤退してしまうのです。

農業は初期にそれなりの投資が必要で、それを長期で回収していくビジネスです。
その中で有益な情報も、自分なりの情報の見かたも蓄積され、より効率的な回収が可能となります。

長く続けることで畑のことだけではなく、消費者の方も見えてきます。
農産物を見ていれば社会の構造も見え、次の展開のヒントが見えてきます。

「ここ」に必要なもの

逆に言えば、現地の状況を鑑みないままに、有名な〇〇農法とか、近隣諸国の農法を導入するとかそういうことではカンボジアの農業で利益を出すことはできません。

それがその場でワークするのか分からないままに、大きなシステムを入れるのはリスクが大きすぎます。
まず今の現場を知り、ここには何が不足しているのか、何から始めればいいのか、そして収穫後の物流や販売方法まで考えなければなりません。

そうして創り上げられるのが、生きた情報というものです。

農業は川上から始めても川下の小売りから始めてもいいのです。
農業とはその大きな流れのどこかを自分のベースにして、そこから展開しなければならない、そういう仕事だと思っています。

最初に足元を固めてから拡大することが肝心です。
数十、数百ヘクタールで失敗した話をいくつか聞いたことがあります。

結局、現地に早く入り、腰を据えて続ける人・組織が雪だるま式に情報を蓄積し、ビジネス上の優位を築くということだと思います。

0 件のコメント :

コメントを投稿